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上がらない給与と働き方

  2022年10月4日 カテゴリ:コラム


日本人の給与は30年間上がっていない

 国税庁の民間給与の実態調査によると、令和2(2020年)年の平均給与は433万円。1995年時の平均給与と比較しても低く、傾向として減少傾向が約30年間続いています。
 東京オリンピックの取材に訪れた外国のメディアが、「日本の物価の安さに驚いた」との報道もなされていました。今年に入ってからは円安が加速し、外国の方から見れば、日本はまさに「買い」。しかし日本人にとっては、自分たちの給与が上がっていないので、ほしいものをなかなか買うことができません。どうして日本人の給与は上がらないのでしょうか。

製造業がリードしてきた日本経済

 日本の高度経済成長は製造業が経済をけん引してきました。ひとつの製品が完成するまで、上流から下流工程まで長く、職種も多岐にわたります。そのため多くの人の雇用が確保され、中小企業が育ちました。昭和の時代、日本経済や日本人の意識は「1億総中流」などの言葉で表現されました。「決してお金持ちではないけれど、幸せに生きていけるぐらいの収入はある」ということでしょうか。
 しかし時代は大きく変わりました。バブル経済崩壊以降、大企業でも新たな雇用の制限がなされ、景気拡張が始まった 2002年以降の雇用でさえ、数こそ大企業は雇用を拡張したものの、その質を見ると非正規雇用による増加が主でした。(厚生労働省・賃金形成の現状と今後の展望)
 さらにこの間、日本経済の主役も大きく変わりつつあります。内閣府の「国民経済計算」では、製造業は1970年当時は全体の30%あったものが、2000年を超えると20%前半に。個々の企業の営業利益の低下もあり、製造業は我が身を守るために物品の調達を海外に求めました。いわゆる「グローバル・サプライチェーン」の加速です。生産工場も日本から海外へ移転。雇用の喪失が起こり地域経済が衰退しました。経済産業省の「製造業を巡る動向と今後の課題」では、2017年当時で企業の売上の25%が海外で生産したものと記されています。いまや日本の企業が作ったものではあるけれど、必ずしもメイド・イン・ジャパンとは言い切れないものが、私たちの身の回りにあふれています。
 ウクライナ情勢や中国と台湾の関係など、世界の情勢の不安定化や資源や食糧の高騰、現代のものづくりに欠かせない半導体の圧倒的不足・・・弱った日本に、サプライチェーンを海外に求め続けた代償がいま大きくのしかかっています。

高付加価値を認める社会を

 ひとつのものをつくるのに、大勢の人間が規律良く働いて、均質のものをつくることに対する価値は、今や昔ほど高くありません。それよりも、少数のクリエーターが作り出した映像や音楽がネット社会を通じて多くの富を得ることが可能な時代になっています。もちろん、みんながこうした成功を収められるわけではありません。経営に持続性が求められるなら、たとえ成功した人でも、瞬発力はあっても持続性に乏しく、新陳代謝が激しい世界になっているようにも見えます。
 これから日本が豊かになっていくひとつの方法は「いいものはいい」と認め、そこに高い対価を支払うことだと思います。クリエイティブになることも、ITに強くなることも必要でしょう。でも決してそれだけでもなく、地域に残る文化や職人技術を認め、中小企業が持つオンリーワンの技術に対し合い見積もりを求めないなど、今まで私たちが見捨ててきた価値にも新しい光をあてる作業も必要です。もちろんそれには受け手側の「目利き力」も求められます。均質のものを大量に作り富を築いてきた構図から、小さくてもきらりと光るものに高い対価を。劣化していく日本人の底力を見せられる時間はそう多くは残っていません。

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