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地方鉄道の存続と働き方

  2022年9月6日 カテゴリ:コラム


「鉄道を残せ」というけれど・・・ 

 地方鉄道の存続が危機に立たされています。昭和の高度経済成長期に拍車がかかった、地方から都市への人口転出で、若い人や働く世代が東京や大阪などの大都市に集中しました。今もその傾向は変わりません。駅周辺に目立った産業基盤がない地方のまちは、大都市のように鉄道に乗って郊外都市から都心への通勤をする機会もありません。地方の人からは「鉄道を残してほしい」との声が聞かれますが、乗る人がいないのが現実です。

昭和の課題を令和に引きずる現代

 国鉄が民営化されたのは1987年度。慢性的な赤字を解決する手段として当時の政府は民営化を選びました。
 鉄道は明治以降、国家繁栄の大きな力でした。鉄の塊が白い煙を出しながら高速で走る機関車は、これから日本が発展する予感を人々に与えたことでしょう。
 それ以降も大都市から地方に伸びる主要路線と地方と地方を結ぶ鉄道は、1974年当時の「国土の均衡ある発展」の表現にあるように、大都市のエネルギーを地方にも及ぼしたいとする意図があり、鉄道に対して人々が寄せる期待や関心は時代とともに変化していきました。これは高速道路の建設にも同様のことがいえます。人口流出が進む地方では、鉄道や道路などのインフラが出来上がれば地方を潤してくれるという妄想があったのかもしれません。地方出身の政治家も、いかに「わがまちに鉄道や高速道路を持ってくるか」に腐心していた時代がありました。
 しかし、地方の衰退はインフラの誘致では叶わず、今も地方は深刻な人口減少や高齢化が加速しています。2014年、当時の「日本創生会議」が打ち出した、「消滅可能性都市」(2010年から2040年にかけて20 ~39歳の若年女性人口が5割以下に減少すると予想される自治体)は、地方都市がいかに持続困難なものであるかを象徴するものとして大きな話題となりました。    
 まもなく国鉄民営化から40年が経過しようとする令和の時代に、昭和の課題を依然ひきづったままであることを、私たちは深く認識する必要があります。

地方鉄道の存続と自治体の限界

 地方鉄道を数多く抱えるJR北海道やJR九州などは地方鉄道の存続はより深刻な問題です。大都市圏であげた収益を地方鉄道で出した赤字に補填できないからです。
 こうした会社は、地方鉄道の存続条件に、地方自治体からの財政的支援を挙げています。「続けてほしかったら、お金を出して」というところでしょうか。民営化されたJRは、自社で地方鉄道を維持する必然性は薄れています。しかし県知事や地方自治体の首長からは警戒の声が出ています。自治体も財政的に苦しく、とても鉄道会社を救済する余裕などないのが本音でしょう。鉄道会社も自治体も「収益が減少し、支出が増える」その限界線に来ているのだと思います。

本質はいかに、地方で需要を生み出すか

 こうした議論を見ていると、地方鉄道の存続というひとつのテーマに矮小化して見ていることに違和感を覚えます。ここ3年の間に社会は大きく変化しました。コロナ禍で大都市圏でも鉄道利用者が減少し、テレワークやサテライトオフィスといった新しい働き方が生まれました。大都市にあるオフィスに通うため、毎日満員電車に押し込められ、通勤時間が1時間以上かかる郊外都市から通う価値観が変わる時代がやってくるかもしれません。コロナ対応の成熟化で再び通勤ラッシュが戻りつつある昨今ですが、せっかく生まれた新しい価値を地方の活性化に向けるため、官民とももうひとふんばりが必要だと感じています。「都会でなければ生活できない」という価値観から脱却し、「地方でも都会と同じように働ける」そうした時代に転換すべきです。
 要はいかに、地方で需要を生み出すか。地方が元気になれば、鉄道の需要も今よりは増えるはずです。

地方の政治家こそ経済に強くなってほしい

 参院選が終わり、世間の関心は宗教と政治のかかわり、政治への関与をめぐり、連日報道過多が続きます。しかし、本来の政治の役割は中長期的な視野にも立ち、昭和の課題を断ち切ることも大きな仕事のひとつだと思います。
 鉄道や高速道路、または「箱もの」の建設、地方にできた資産は人口減少や高齢化によって遺産に変わりつつあります。過去の遺物にさせたないためにも、地方出身の政治家こそ経済に強くなっていただき、地方で新しい産業や雇用を生み出すための知恵を絞っていただければと思います。
 参院選時に、為書きで埋め尽くされた選挙事務所は、今は夢のあと。地方全体が夢のあとに終わらぬよう、地方の活性化のための知恵を絞り続ける努力を私たちも忘れないでいたい。地方鉄道の存続を考えることは、地方の課題を解決するひとつの糸口としてとらえたいものです。

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